知識デザイン企業

読んでみると、著者はアジャイル方面の人にはおなじみ(?)の野中郁次郎氏とも共著があり、『Software People Best Selection』を読んだ直後だったので、タイムリーな内容でした。読んでなかったら「収穫逓増(ていぞう)」読み方がわからなかったです。アレグザンダーの「パタン・ランゲージ」について "「無名の質」を生み出すための、綜合する共通言語" という説明がされていて、アレグザンダーの名前しか知らない自分には助かりました。本書の大筋とはあまり関係がないのですが、以下の部分が繋がりました。

2004年まで日本の鉄道事故は長期減少傾向にあった。しかし、それまでのデータに基づいて出版された平成17年度「国土交通白書は「最近事故・トラブルが続発し、国民の運輸の安全への信頼が揺らいでいると指摘していた。まさにその年(2005年)、JR西日本福知山線脱線事故など大型事故が一気に4件も相次いだ。事故件数は前年比16%増、死傷者数は1358人と前年比105%増となった。
 教訓としては、これまでの傾向や常識を破る、大きな出来事はある時突然「驚き」となって起きる、ということ、ただし、その兆候は事前になんらかの形で現れる、ということだ。

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JR西の例の大事故の影響なのだろう。事故を起こすよりも、遅れたほうがいい、というように、「運用」の基準が変わった、ということなのだろうと思う。

私がたまたまこういうケースに多数遭遇したのかと思い、念のため日本の家族にも聞いてみたが、本当にそうらしい。会社で「電車の遅れのために遅刻します」という人が、このところものすごく増えている、と言っていた。

そうかー、「電車は遅れてはいけない」という暗黙の了解が、「電車は遅れてもいい」というふうに変わったんだな。日本の「世論」も、あの事故を見て考えが変わり、「遅れる」ということが暗黙の了解になったんだな。で、電車が遅れるなら、自分も会社に遅刻するのは仕方ない、ということになった。

ニッポンの新しい常識 - 「電車は遅れてもよい」 - michikaifu’s diary

情報構造が間違っていると、あとで表面的にラベルの表現やレイアウトを工夫したところでどうにもならない問題が生じたりもするわけで、そのくらい情報デザインにおいて情報の構造化というのは大事なわけです。

ただ、情報の構造化といっても、単に情報をどう分類するかだけでありません。カードソートでも、分類したカテゴリー名にどういうラベルをつけるか、またラベルをどういう順序で並べるかによっても、正解率は違ってきます。

千葉工業大学で「情報の構造化とHCDプロセス」という話をしてきました: DESIGN IT! w/LOVE

↑が最近見たエントリ、↓が書籍です。

大規模製品開発プロジェクトのリーダーやプロダクトを生み出すリーダー、プロデューサーはは、暗黙にこうしたパタン・ランゲージを用いてきた。IDEOやDEGWのようなデザイン企業は、概念化のまとめに特製のピクチャー・カードを(「メソッド・カード」などと呼ばれている)などを利用するが、これも同様の狙いがあってのことと思われる。

関連した内容で、選択するという行為についての記述があったはずなのですが、どこで出てきたのだったか、すぐに探せませんでした。と、いつものように本書の主張とはあまり関係ないところを抜き出してしまうのですが、SI業を念頭に読むととても大きな課題を突きつけられた感じがします。消化不良もいいところです。本書を読むと、うっかりアジャイルと口に出したりできませんね。

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2008/07/19着手
2008/07/21読了